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テンポ “tempo” に関する誤解が多いのはなぜか?(NOTE)


 日本語で「テンポ」と言えば、通常は音楽における「ビート(拍)の長さ」を表すイタリア語(“tempo”)の意味で理解されています。バレーボールの「テンポ」も、それと同じ意味だと受け取られやすく、ファースト・テンポが「せわしないプレー動作で打つアタック」や「助走を削ってコンパクトにスイングして打つアタック」などと誤解される、第一の要因となっています。

 “tempo” は元々ラテン語で「時間」を表す言葉であり、それが16世紀頃に「ある一定時間(“tempo”)内に、音楽やダンスを何フレーズ繰り返すことが可能か」というところから、現在のような「ビートの長さ」を表す意味へと変わったようです。バレーボールにおける「テンポ」は、むしろ元々のラテン語の「時間」という意味を、色濃く残した表現であると考えられます。

 ところが「時間」という表現がまた、あらたな誤解を生む要因となっています。ラテン語の影響が色濃く残るフランス語においては、「時間」には “temps(タン)” と “heure(ウール)” の2種類の表現があり、前者が “tempo” から派生したフランス語です。両者の違いは、“heure” が時計などの客観的な数値で計測される「時間(時刻)」を表すのに対して、“temps” は「ある一連のエピソードが行われる、いつ始まっていつ終わるか明確でない時間」を表しています。日本語ではこの両者の概念を明確に区別する言葉がなく、どちらも「時間」と表現するため、バレーボールの「テンポ」も「セット・アップを基準とした時間軸の中で〝何秒で〟ボール・ヒットするか」という話に陥りやすいのです。

 “tempo”(=“temps”)は「セット・アップを基準とした時間軸の中で、アタッカーが助走するという一連のエピソードが行われる時間(タイミング)」を表していると考えると、バレーボールの「テンポ」の正しい概念がイメージしやすいでしょう。