「協議項目:オーバーハンド・パスと床反力」の版間の差分

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初心者のオーバーハンドパスは、距離も出ず,正確性も乏しいケースが多く見受けられる。では,バレーボール上級者と初心者ではどこが異なるのであろうか。ここでは、オーバーハンドパスのときの力学現象、特に床の反作用に着目した現象を考察することで、上級者が最小限の力でボールを運んでいることを明らかとする。 まず、オーバーハンドパスの動作を側面から撮影し、上級者と初心者を比較した。上級者は、「床についた足」と「重心」、「ボールが飛ぶ方向」が、ほぼ一直線になるが、これに対し、初心者は、これが一直線にならない。このことから、初心者は床の反力を利用せずにボールを飛ばそうとしていることが分かる。床の反力を利用せずにボールを飛ばすためには、ボールに対して大きな質量を必要とすることから、体格が大きな選手しかこの方法でボールを飛ばすことはできない。また、無理に飛ばそうと力んでしまったり、反動で体が反対方向にずれてしまうことから、正確なパスも望めない。「床の反力を利用する」ことは、バレーを行う上で最低限認識できていないといけない事項であるにもかかわらず、指導の現場であまり認識されているようには見受けられない。ただし、一般的に指導で行われている以下の事柄は、結果として「床の反力を利用する」指導に繋がっている。
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初心者のオーバーハンドパスは、距離も出ず、正確性も乏しいケースが多く見受けられます。では、バレーボール上級者と初心者ではどこが異なるのでしょうか。ここでは、オーバーハンドパスのときの力学現象、特に床の反作用に着目した現象を考察することで、上級者が最小限の力でボールを運んでいることを明らかとします。 まず、オーバーハンドパスの動作を側面から撮影し、上級者と初心者を比較しました。上級者は、「床についた足」と「重心」、「ボールが飛ぶ方向」が、ほぼ一直線になりますが、これに対し、初心者は、これが一直線になりません。このことから、初心者は床反力を利用せずにボールを飛ばそうとしていることが分かります。床反力を利用せずにボールを飛ばすためには、ボールに対して大きな質量を必要とすることから、体格が大きな選手しかこの方法でボールを飛ばすことはできません。また、無理に飛ばそうと力んでしまったり、反動で体が反対方向に逃げてしまうことから、正確なパスも望めません。「床反力を利用する」ことは、バレーを行う上で最低限認識できていないといけない事項であるにもかかわらず、指導の現場であまり認識されているようには見受けられません。ただし、一般的に指導で行われている以下の事柄は、結果として「床反力を利用する」指導に繋がっています。
  
 
* ボールの下に必ず入る。
 
* ボールの下に必ず入る。
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...など.
 
...など.
  
これらは、意図しているわけではないが、床反力を利用する指導になっている。しかしながら,意図しているわけではないので、体格、筋力に優れた選手の中には、「正しい技術」を用いなくても、ボールを飛ばせてしまう事例もある。それゆえ、初心者の段階から、正しいと思われる技術を指導者が理解し、伝えていく努力が必要であろう。
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これらは、意図しているわけではないですが、結果として床反力を利用する指導になっています。しかしながら,意図しているわけではないので、床反力を利用しなくても、とりあえずボールを飛ばせてしまえれば、それが放置されてしまう状況も見られるようです。それゆえ、初心者の段階から、より良いと思われる技術を指導者が理解し、伝えていく努力が必要です。
  
  
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同じく,発表のときに用いた動画です。
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同じく、発表のときに用いた動画です。
 
<youtube>Bb9loM6ej94</youtube>
 
<youtube>Bb9loM6ej94</youtube>
  

2015年2月13日 (金) 03:47時点における版

バレーボール記事

   オーバーハンドパスと床反力   




   三村泰成       (鶴岡高専)   




オーバーハンドパスにおける床反力とは?

(バレーボール学会で発表した内容を元にして編集、加筆しています[1][2]


初心者のオーバーハンドパスは、距離も出ず、正確性も乏しいケースが多く見受けられます。では、バレーボール上級者と初心者ではどこが異なるのでしょうか。ここでは、オーバーハンドパスのときの力学現象、特に床の反作用に着目した現象を考察することで、上級者が最小限の力でボールを運んでいることを明らかとします。 まず、オーバーハンドパスの動作を側面から撮影し、上級者と初心者を比較しました。上級者は、「床についた足」と「重心」、「ボールが飛ぶ方向」が、ほぼ一直線になりますが、これに対し、初心者は、これが一直線になりません。このことから、初心者は床反力を利用せずにボールを飛ばそうとしていることが分かります。床反力を利用せずにボールを飛ばすためには、ボールに対して大きな質量を必要とすることから、体格が大きな選手しかこの方法でボールを飛ばすことはできません。また、無理に飛ばそうと力んでしまったり、反動で体が反対方向に逃げてしまうことから、正確なパスも望めません。「床反力を利用する」ことは、バレーを行う上で最低限認識できていないといけない事項であるにもかかわらず、指導の現場であまり認識されているようには見受けられません。ただし、一般的に指導で行われている以下の事柄は、結果として「床反力を利用する」指導に繋がっています。

  • ボールの下に必ず入る。
  • ヘディングでボールを正確に飛ばせる」ということは、床反力を利用できている証である。

...など.

これらは、意図しているわけではないですが、結果として床反力を利用する指導になっています。しかしながら,意図しているわけではないので、床反力を利用しなくても、とりあえずボールを飛ばせてしまえれば、それが放置されてしまう状況も見られるようです。それゆえ、初心者の段階から、より良いと思われる技術を指導者が理解し、伝えていく努力が必要です。


バレーボール研究第15巻第1号,p.78,(2013)


バレーボール学会で発表したときのポスターです。


同じく、発表のときに用いた動画です。

バランスボールとバレーボールを使った床反力動画です。


ジャンプ・セットのときの床反力は?

Jump set and mass center.png
  ジャンプ・セットのときの力線と重心の関係



  リカルド・ガルシア(Ricardo Garcia)
  ニコラ・グルビッチ(Nicola Grbic)
  ラファエル(Raphael Vieira De Oliveira)
  Mikko Esko



地球との関係

Earth and overpass.png
  地球と反力の関係



床反力を感じるための練習

  直上突きトス



参考文献

  1. オーバーハンドパスにおけるボールを飛ばす要因についての一考察,バレーボール研究第15巻第1号,p.78,(2013)
  2. バレーボール学会機関誌のページ


外部リンク