「協議項目:Evidence-based Volleyball」の版間の差分
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バレーボールにおいても、'''実績のある元選手や指導者が勧めているから良いという、根拠のあいまいな考え方はやめて'''、その効果をデータで検証し、勝率を高めることが統計学的に確認されたものを導入すべきではないか? というのが、'''Evidence-based Volleyball(EBV)'''です。 | バレーボールにおいても、'''実績のある元選手や指導者が勧めているから良いという、根拠のあいまいな考え方はやめて'''、その効果をデータで検証し、勝率を高めることが統計学的に確認されたものを導入すべきではないか? というのが、'''Evidence-based Volleyball(EBV)'''です。 | ||
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たとえば、バレーボールのゲームにおいて、一般的には「サーブ・レシーブ成功率が高いほど、レセプション・アタック決定率(ないしは効果率)が高くなる」というのが常識と考えられてきましたが、それを統計学的に確認してみるとこのような結果が出ます。 | たとえば、バレーボールのゲームにおいて、一般的には「サーブ・レシーブ成功率が高いほど、レセプション・アタック決定率(ないしは効果率)が高くなる」というのが常識と考えられてきましたが、それを統計学的に確認してみるとこのような結果が出ます。 | ||
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− | この結果を基にして、ゲームに勝つためにどうプレーすべきか? もしくはどう指導すべきか? を考えていく行動指針となるのが、Evidence-based | + | この結果を基にして、ゲームに勝つためにどうプレーすべきか? もしくはどう指導すべきか? を考えていく行動指針となるのが、Evidence-based Volleyballです。この結果を重視すれば、サーブ・レシーブ成功率を高めるための練習(それはすなわち、相手にサービス・エースで得点されないこと、を意味します)も必要でしょうけれど、たとえレセプションが想定どおりに返球されなかった場合でも、いかにしてアタック決定率・効果率を高めるか? そのための具体案を考えてプレーする、あるいは練習させることこそが重要である、と考えられます。 |
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+ | その具体案の1例としては、「[[固定項目:スロット|スロット]]の概念」を導入すること、が挙げられます。 | ||
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+ | それと同時に、上記の「レセプションとアタックの関係」についての検証においては、問題点がもちろん存在します。具体的には、上記にある「アタック」とは「レセプション・アタック」と「トランジション・アタック」の両者の総和であり、より精度の高い検証を行うには「サーブ・レシーブ成功率」と「レセプション・アタック決定率(ないしは効果率)」との関係を調べる作業が当然必要になります。そうやって、検証作業は常に批判にさらされることによって、より信頼できるエビデンスを構築し続けていくことが要求されます。 | ||
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+ | その作業の1例が、「[[協議項目:レセプションとアタックの関係|協議項目:レセプションとアタックの関係]]」における議論です。 | ||
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+ | #'''「アタック決定率」はゲームの勝敗に大きく影響する因子である''' | ||
+ | #'''「アタック決定率」に比して「サーブ・レシーブ成功率」は、ゲームの勝敗に影響する因子ではあるものの、その影響は弱いものである''' | ||
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+ | 2016年3月の時点で、上記3点以外に、バレーボールにおいてエビデンス・レベルの高いものは、ほぼ存在していません。つまりは、このサイトの[[固定項目:リスト|固定項目]]にある大半の項目はEvidence-basedとは言えない、ということになります。全ての項目をEvidence-basedにすることは非常に困難ですが、少しでも信頼度の高い情報へとアップデートする努力を、当サイトにおいては皆さまの御協力の下で、不断なく行っていきたいと考えています。 | ||
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+ | == カテゴリ間における違いを、どう克服すればよいか? == | ||
− | + | Evidence-based Volleyball(EBV)を実践するにあたり、2016年3月の時点で最も大きな障壁の一つが、「トップ・カテゴリにおける解析によって得られた結果が、果たして底辺カテゴリにおいてどの程度、信用に足るものなのか?」という問題でしょう。この問題に対して、一つの示唆的な回答が「[http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/article/149 カテゴリ間の「連続性」について]」で提示されています([http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ 『バレーボールのデータを分析するブログ。』]より)。 | |
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
*[http://vbw.jp/2799/ Evidence-based Volleyball事始め 第1回(『バレーボールマガジン』より)] | *[http://vbw.jp/2799/ Evidence-based Volleyball事始め 第1回(『バレーボールマガジン』より)] | ||
− | *[https://www.facebook.com/volleypedia/photos/a.646358865384533.1073741828.640370385983381/1001610179859398/ | + | *[https://www.facebook.com/volleypedia/photos/a.646358865384533.1073741828.640370385983381/1001610179859398/ Evidence-based Volleyball(EBV)元年宣言!(その1)] |
− | *[https://www.facebook.com/volleypedia/posts/999018803451869/ | + | *[https://www.facebook.com/volleypedia/posts/999018803451869/ Evidence-based Volleyball(EBV)元年宣言!(その2)] |
2016年3月30日 (水) 12:40時点における最新版
バレーボール用語
Evidence-based Volleyball(EBV) -- |
現時点で利用可能な、統計学的に最も信頼できる情報に基づいて、バレーボールをプレーないしは指導すること
「エビデンス(Evidence)」とは、理論的に導かれる原理原則や、これまでずっとこうしてきたという経験則ではなく、設定した目標を達成することが統計学的に証明された、という意味です。
医療の世界ではすでに、過去の経験則に基づいた診療ではなく、「エビデンス」に基づいた診療、すなわちEvidence-based Medicine(EBM)が、広く浸透しています。
バレーボールにおいても、実績のある元選手や指導者が勧めているから良いという、根拠のあいまいな考え方はやめて、その効果をデータで検証し、勝率を高めることが統計学的に確認されたものを導入すべきではないか? というのが、Evidence-based Volleyball(EBV)です。
Evidence-based Volleyball(EBV)の実践例
たとえば、バレーボールのゲームにおいて、一般的には「サーブ・レシーブ成功率が高いほど、レセプション・アタック決定率(ないしは効果率)が高くなる」というのが常識と考えられてきましたが、それを統計学的に確認してみるとこのような結果が出ます。
この結果を基にして、ゲームに勝つためにどうプレーすべきか? もしくはどう指導すべきか? を考えていく行動指針となるのが、Evidence-based Volleyballです。この結果を重視すれば、サーブ・レシーブ成功率を高めるための練習(それはすなわち、相手にサービス・エースで得点されないこと、を意味します)も必要でしょうけれど、たとえレセプションが想定どおりに返球されなかった場合でも、いかにしてアタック決定率・効果率を高めるか? そのための具体案を考えてプレーする、あるいは練習させることこそが重要である、と考えられます。
その具体案の1例としては、「スロットの概念」を導入すること、が挙げられます。
それと同時に、上記の「レセプションとアタックの関係」についての検証においては、問題点がもちろん存在します。具体的には、上記にある「アタック」とは「レセプション・アタック」と「トランジション・アタック」の両者の総和であり、より精度の高い検証を行うには「サーブ・レシーブ成功率」と「レセプション・アタック決定率(ないしは効果率)」との関係を調べる作業が当然必要になります。そうやって、検証作業は常に批判にさらされることによって、より信頼できるエビデンスを構築し続けていくことが要求されます。
その作業の1例が、「協議項目:レセプションとアタックの関係」における議論です。
こうして、批判的検証を繰り返し行い、2015年の時点で最も信頼度の高いエビデンスとして、日本バレーボール学会の研究機関誌『バレーボール研究』第17巻(2015年6月)に原著論文としてアクセプトされたものが、「バレーボールにおけるレセプションが試合に及ぼす影響」です。
この論文の中で提示されたエビデンスは、FIVB主催の男女国際大会ならびに、V・プレミアリーグ男女、V・チャレンジリーグ男女といった国内外のトップ・カテゴリにおいて、
- 「アタック決定率」はゲームの勝敗に大きく影響する因子である
- 「アタック決定率」に比して「サーブ・レシーブ成功率」は、ゲームの勝敗に影響する因子ではあるものの、その影響は弱いものである
- 「サーブ・レシーブ成功率」よりもむしろ「サーブ・レシーブ失点率」の方が、ゲームの勝敗に与える影響が大きい因子である
の3つです。
2016年3月の時点で、上記3点以外に、バレーボールにおいてエビデンス・レベルの高いものは、ほぼ存在していません。つまりは、このサイトの固定項目にある大半の項目はEvidence-basedとは言えない、ということになります。全ての項目をEvidence-basedにすることは非常に困難ですが、少しでも信頼度の高い情報へとアップデートする努力を、当サイトにおいては皆さまの御協力の下で、不断なく行っていきたいと考えています。
カテゴリ間における違いを、どう克服すればよいか?
Evidence-based Volleyball(EBV)を実践するにあたり、2016年3月の時点で最も大きな障壁の一つが、「トップ・カテゴリにおける解析によって得られた結果が、果たして底辺カテゴリにおいてどの程度、信用に足るものなのか?」という問題でしょう。この問題に対して、一つの示唆的な回答が「カテゴリ間の「連続性」について」で提示されています(『バレーボールのデータを分析するブログ。』より)。