「固定項目:シンクロ攻撃」の版間の差分

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2004年のアテネ・オリンピックでブラジル男子ナショナル・チームが披露した戦術です。後衛のミドル・ブロッカーがリベロと交代する現在の世界トップ・レベルにおける主流の戦術において、ほぼ完成型・理想型と考えられる姿を、同じくブラジル男子ナショナル・チームが2006年の世界選手権で繰り広げて優勝しています。それ以来、組織的な[[固定項目:リード・ブロック|リード・ブロック]]戦術に対抗する最も効果的なアタック戦術として、男子バレーにおいては世界標準戦術となりました。
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 2004年のアテネ・オリンピックでブラジル男子ナショナル・チームが披露した戦術です。後衛のミドル・ブロッカーがリベロと交代する現在の世界トップ・レベルにおける主流の戦術において、ほぼ完成型・理想型と考えられる姿を、同じくブラジル男子ナショナル・チームが2006年の世界選手権で繰り広げて優勝しています。それ以来、組織的な[[固定項目:リード・ブロック|リード・ブロック]]戦術に対抗する最も効果的なアタック戦術として、男子バレーにおいては世界標準戦術となりました。
  
  
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後衛のミドル・ブロッカーがリベロと交代することが多い現状では、リベロとセッターを除くコート上の4人のアタッカーがそれぞれ別の[[固定項目:スロット|スロット]]位置に向かって、ファースト・コンタクトを起点に一斉に助走動作を開始し、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]の瞬間を目安に踏み切り動作を行います(狭義のファースト・テンポ)。[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]前に行われる4人のアタッカーの助走動作がシンクロして見えるため、こうした助走動作を「シンクロ助走」、繰り出されるアタックを「シンクロ攻撃」と呼びます。
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 後衛のミドル・ブロッカーがリベロと交代することが多い現状では、リベロとセッターを除くコート上の4人のアタッカーがそれぞれ別の[[固定項目:スロット|スロット]]位置に向かって、ファースト・コンタクトを起点に一斉に助走動作を開始し、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]の瞬間を目安に踏み切り動作を行います(狭義のファースト・テンポ)。[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]前に行われる4人のアタッカーの助走動作がシンクロして見えるため、こうした助走動作を「シンクロ助走」、繰り出されるアタックを「シンクロ攻撃」と呼びます。
  
 
[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]の瞬間には、[[固定項目:リード・ブロック|リード・ブロック]]で対応する相手のブロッカー陣3人はブロック動作を開始するのは不可能であり、次の瞬間に誰にセットされたとしても、そのアタッカーは踏み切り動作をほぼ終えつつある状況のため、相手のブロッカー陣よりも「相対的に早いタイミングで」踏み切ることが可能となり、常に「[[固定項目:リード・ブロック|リード・ブロック]]に効果を発揮するアタック戦術」が繰り出せます。
 
[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]の瞬間には、[[固定項目:リード・ブロック|リード・ブロック]]で対応する相手のブロッカー陣3人はブロック動作を開始するのは不可能であり、次の瞬間に誰にセットされたとしても、そのアタッカーは踏み切り動作をほぼ終えつつある状況のため、相手のブロッカー陣よりも「相対的に早いタイミングで」踏み切ることが可能となり、常に「[[固定項目:リード・ブロック|リード・ブロック]]に効果を発揮するアタック戦術」が繰り出せます。
  
また、[[固定項目:コミット・ブロック|コミット・ブロック]]で対抗しようにもブロッカーの人数(3人)より多い人数のアタッカー(4人以上)がシンクロ助走を行うため、マン・ツー・マンでも対応できません。
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 また、[[固定項目:コミット・ブロック|コミット・ブロック]]で対抗しようにもブロッカーの人数(3人)より多い人数のアタッカー(4人以上)がシンクロ助走を行うため、マン・ツー・マンでも対応できません。
  
2011年の時点で、このアタック戦術に対して有効なブロック戦術は確立していないため、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]の瞬間に4人のアタッカーがこうした狭義のファースト・テンポの助走動作を確実に実行できさえすれば、高い確率で点数を奪うことが保証されるアタック戦術であり、その意味では、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]前のアタッカーの助走動作(シンクロ助走)をいかにして確保するか? がカギとなります。
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 2011年の時点で、このアタック戦術に対して有効なブロック戦術は確立していないため、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]の瞬間に4人のアタッカーがこうした狭義のファースト・テンポの助走動作を確実に実行できさえすれば、高い確率で点数を奪うことが保証されるアタック戦術であり、その意味では、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]前のアタッカーの助走動作(シンクロ助走)をいかにして確保するか? がカギとなります。
  
シンクロ助走は、狭義のファースト・テンポの助走動作を4人(ないしは5人)のアタッカーが行うことであり、それを確保するにはファースト・コンタクトの返球位置にこだわってはいけません。レシーブを目標位置に正確に返球することを優先すると、アタッカーがファースト・コンタクトを行う場合に、レシーブ直後に助走動作を開始することが困難となり、結果的にシンクロ助走が達成できなくなるからです。
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 シンクロ助走は、狭義のファースト・テンポの助走動作を4人(ないしは5人)のアタッカーが行うことであり、それを確保するにはファースト・コンタクトの返球位置にこだわってはいけません。レシーブを目標位置に正確に返球することを優先すると、アタッカーがファースト・コンタクトを行う場合に、レシーブ直後に助走動作を開始することが困難となり、結果的にシンクロ助走が達成できなくなるからです。
  
ですから、ファースト・コンタクトで重要な点は、ともかく高くゆっくりと返球することです。高くゆっくり返球することさえ意識していれば、ファースト・コンタクトを行うアタッカーの精神的負担は軽くなり、レシーブ直後に助走動作を開始できます。返球位置が多少悪くても、セッターが時間的余裕を持ってレシーブ返球位置に移動してセット動作を行うことが可能です。ファースト・コンタクトを行わないアタッカーにとっても、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]までの時間的余裕があることで十分な助走距離を確保することが可能となり、全力でジャンプして自身の最高到達点で[[固定項目:ボール・ヒット|ボール・ヒット]]する、理想的な狭義のファースト・テンポを達成しやすくなるのです。
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 ですから、ファースト・コンタクトで重要な点は、ともかく高くゆっくりと返球することです。高くゆっくり返球することさえ意識していれば、ファースト・コンタクトを行うアタッカーの精神的負担は軽くなり、レシーブ直後に助走動作を開始できます。返球位置が多少悪くても、セッターが時間的余裕を持ってレシーブ返球位置に移動してセット動作を行うことが可能です。ファースト・コンタクトを行わないアタッカーにとっても、[[固定項目:セット・アップ|セット・アップ]]までの時間的余裕があることで十分な助走距離を確保することが可能となり、全力でジャンプして自身の最高到達点で[[固定項目:ボール・ヒット|ボール・ヒット]]する、理想的な狭義のファースト・テンポを達成しやすくなるのです。
  
 
さらに、ファースト・コンタクトをセッターが行った場合にもシンクロ助走を可能とするには、リベロがセカンド・セッターの役割を果たすことが理にかなっており、そのためファースト・コンタクトの返球位置はアタック・ライン付近が理想と考えられるようになりました。
 
さらに、ファースト・コンタクトをセッターが行った場合にもシンクロ助走を可能とするには、リベロがセカンド・セッターの役割を果たすことが理にかなっており、そのためファースト・コンタクトの返球位置はアタック・ライン付近が理想と考えられるようになりました。

2014年9月3日 (水) 21:51時点における版

バレーボール用語

   シンクロ攻撃    -- 該当する英語なし --   




相手のブロッカー人数よりも多い人数のアタッカーが、それぞれ別のスロットから狭義のファースト・テンポで助走動作を行い、セット・アップ前のアタッカーの助走動作がシンクロするアタック戦術

  • 2010年世界選手権におけるアルゼンチン男子ナショナル・チームのシンクロ攻撃


 2004年のアテネ・オリンピックでブラジル男子ナショナル・チームが披露した戦術です。後衛のミドル・ブロッカーがリベロと交代する現在の世界トップ・レベルにおける主流の戦術において、ほぼ完成型・理想型と考えられる姿を、同じくブラジル男子ナショナル・チームが2006年の世界選手権で繰り広げて優勝しています。それ以来、組織的なリード・ブロック戦術に対抗する最も効果的なアタック戦術として、男子バレーにおいては世界標準戦術となりました。


  • 2006年世界選手権におけるブラジル男子ナショナル・チームのシンクロ攻撃


 後衛のミドル・ブロッカーがリベロと交代することが多い現状では、リベロとセッターを除くコート上の4人のアタッカーがそれぞれ別のスロット位置に向かって、ファースト・コンタクトを起点に一斉に助走動作を開始し、セット・アップの瞬間を目安に踏み切り動作を行います(狭義のファースト・テンポ)。セット・アップ前に行われる4人のアタッカーの助走動作がシンクロして見えるため、こうした助走動作を「シンクロ助走」、繰り出されるアタックを「シンクロ攻撃」と呼びます。

セット・アップの瞬間には、リード・ブロックで対応する相手のブロッカー陣3人はブロック動作を開始するのは不可能であり、次の瞬間に誰にセットされたとしても、そのアタッカーは踏み切り動作をほぼ終えつつある状況のため、相手のブロッカー陣よりも「相対的に早いタイミングで」踏み切ることが可能となり、常に「リード・ブロックに効果を発揮するアタック戦術」が繰り出せます。

 また、コミット・ブロックで対抗しようにもブロッカーの人数(3人)より多い人数のアタッカー(4人以上)がシンクロ助走を行うため、マン・ツー・マンでも対応できません。

 2011年の時点で、このアタック戦術に対して有効なブロック戦術は確立していないため、セット・アップの瞬間に4人のアタッカーがこうした狭義のファースト・テンポの助走動作を確実に実行できさえすれば、高い確率で点数を奪うことが保証されるアタック戦術であり、その意味では、セット・アップ前のアタッカーの助走動作(シンクロ助走)をいかにして確保するか? がカギとなります。

 シンクロ助走は、狭義のファースト・テンポの助走動作を4人(ないしは5人)のアタッカーが行うことであり、それを確保するにはファースト・コンタクトの返球位置にこだわってはいけません。レシーブを目標位置に正確に返球することを優先すると、アタッカーがファースト・コンタクトを行う場合に、レシーブ直後に助走動作を開始することが困難となり、結果的にシンクロ助走が達成できなくなるからです。

 ですから、ファースト・コンタクトで重要な点は、ともかく高くゆっくりと返球することです。高くゆっくり返球することさえ意識していれば、ファースト・コンタクトを行うアタッカーの精神的負担は軽くなり、レシーブ直後に助走動作を開始できます。返球位置が多少悪くても、セッターが時間的余裕を持ってレシーブ返球位置に移動してセット動作を行うことが可能です。ファースト・コンタクトを行わないアタッカーにとっても、セット・アップまでの時間的余裕があることで十分な助走距離を確保することが可能となり、全力でジャンプして自身の最高到達点でボール・ヒットする、理想的な狭義のファースト・テンポを達成しやすくなるのです。

さらに、ファースト・コンタクトをセッターが行った場合にもシンクロ助走を可能とするには、リベロがセカンド・セッターの役割を果たすことが理にかなっており、そのためファースト・コンタクトの返球位置はアタック・ライン付近が理想と考えられるようになりました。